以前にも原価率について記事を書かせて頂きましたが、今回はもう一歩踏み込んだ原価率のお話です。
原価率の考え方〜よくある質問〜
•飲食店の原価率の相場はどのくらいですか?
•業種別平均原価を知りたい。
•原価率○○%かかっているけど、高いか低いか?
実はこの発想自体がNGです。
材料費は、あくまでも飲食店の経費の一部です。
材料費だけに拘るのは、木を見て森を見ずと一緒です。
その数字だけを見るのではなく、全体の数字を見るようにしましょう。
おさらい:【利益=売上-経費】
【あるイタリアンカフェの原価率】
例えば、業種・客単価・坪数・目的利益が全て同じお店のパターンを比較してみました。
■イタリアンカフェA店
特徴:駅前でお店の前の通行量が多く、立地としては飲食需要が多く、拘りは内装や設備に投資。
席数30席 (稼働率70%)
目標客数 40〜43人
目標日商 13〜14万
では、原価率はどうなっているのか、ちょっとのぞいてみましょう。
売上 400万 100%
材料費 112万 28%
人件費 120万 30%
諸経費 48万 12%
初期費用 90万 25%
利益 20万 5%
[つまり内装や設備にお金をかける分、材料費を少なめに設定]
各数字の計算は以下のように考えてみましょう。
⑴まずは目標売上を設定します。
目標売上を設定する際に必要なのは、席数・目標客数・客単価・稼働率。このお店の場合、稼働率を70%と設定します。(飲食需要の多い立地のため、予約をしてわざわざ行くお店ではない為、予約が少ない分、稼働率は下がります。予約が入らないと席の準備が出来ないので、稼働率が下がるということです)
⑵次に初期費用を決定します。初期費用はある程度の見積等で数字が決定しているので計算しやすいと思います。(内装や設備に拘るため、初期費用は多く設定してあります)
⑶目標利益を設定しましょう。
⑷諸経費を設定します。
残るは材料費と人件費です。こちらがFLコストと言われる部分。
人件費の設定は、席数×稼働率。この計算で出た席数を回すには何人必要か計算します。
残りが材料費にあたる部分です。
今回は席数から材料費を出しましたが、逆の発想でも構いません。
このように必要な経費を計算していきます。
イタリアンカフェB店
特徴:店前通行量が少ないため、リピーターや口コミを重視。内装や設備にはお金をかけず料理とサービスで勝負。
席数24席(稼働率80%)
目標客数 24〜25人
目標日商 8〜9万
B店の原価率はどうなっているのでしょう?
売上 200万 100%
材料費 66万 33%
人件費 60万 30%
諸経費 24万 12%
初期費用 30万 15%
利益 20万 10%
[つまり、店舗にお金をかけないので、初期費用は少なめ。その代わり材料費にお金をかけている]
イタリアンカフェC店
特徴:とにかくコストパフォーマンスが売り。料理の質とボリュームで他店との差別化。
席数 36席(稼働率80%)
目標客数 51人
目標日商 17万
C店の原価率はどうなっているのでしょう?
売上 500万 100%
材料費 240万 48%
人件費 130万 26%
諸経費 60万 12%
初期費用 50万 10%
利益 20万 4%
[とにかく回転率を高く、ひとりでも多く店内に入れたいので席はギュウギュウですが、お客様の納得いくサービス【料理の質とボリューム】ですから、この店舗の場合、材料費は高め]
3店舗を比較して解ること
*3店舗を比較すると解るように、業種・客単価・坪数・目的利益が同じでも、お店の特徴やコンセプト、また立地によって原価率のあり方は様々です。
その個性や強みによって損益の各数字が決まってくるのです。
原価率55~60%と言われていたのは、10数年も昔のことです。現在は消費者に選ばれるお店になるためには、個性や強みが重要です。
最近の飲食業界では『個性や強みになる部分にはお金をかけ、そうでないところは削る』そんな流れが目立ってきています。
中込 絵麻
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