居抜き物件で注意すること

〜居抜き物件と残置物件〜

居抜き物件と残置物件の違い

居抜き物件とは、現状はまだ営業しているが、数ヶ月後に店を閉店させる事が決まっている物件のことを言います。

また残置物件とは、既に店は閉店されていて、設備や残置物がそのまま残っている物件を言います。

 

残置物件は数ヶ月、1年と長い期間閉店状態の事が多く、周りから見ると物件そのものの印象は良いものとは言えません。

長い間、シャッターを下ろしたまま、風も通らない、だんだんと人が寄り付かない空間になってしまうからです。

 

では居抜き物件の場合はどうでしょう。

居抜き物件は、店を閉店させてから新しいテナントが入るまで1~2ヶ月のパターンが多く、数ヶ月閉店状態の残置物件と比較すると、イメージダウンには繋がりにくいような気がします。

更に、業態の近いお店であったなら、お店の閉店から新しいお店の開店までにあまり時間をかけなければ、お客様を引き繋ぐ事も可能性として大きいのです。

 

居抜き物件と残置物件、似たように思えますが、それぞれのメリット・デメリットを考えてみると、そこには大きな差があります。

 

〜居抜き物件の譲渡料の注意点〜

居抜き物件や残置物件のメリットとして、以前のお店が残していった、内装や設備をそのまま使えるので、初期費用はかなり抑えることが出来ます。

しかし、前オーナーに残された内装や設備の譲渡料を支払わなければならない事が多いのです。

新規よりも、費用はかからないとはいえ中古品です。

『動くはずのエアコンが実は故障していて、新しいエアコンを購入した』

などの苦労話を聞いたことがあります。

設備に不備や不具合が生じてないか、細かく確認する必要があります。

それから、引き繋ぐ物が本当に必要かどうか?

譲渡料より価値がある物かどうか?

後に損をしないためにきちんと見極める必要があります。

 

~居抜き物件を選ぶときの注意点~

選ぶときは、前のテナントの退去の理由を明確にすることです。

お客様の評判に関わる理由であれば、その物件はオススメできません。

(たとえば、味の問題・事故を起こした・事件を起こした・・・など)

居抜き物件は前テナントのイメージを引き継ぎやすい為、悪いイメージは顧客の付きに悪影響を及ぼします。

内装や設備はもちろんですが、前テナントの退去理由もこれから飲食店を繁盛させるためには、

大事なポイントとなりますので必ず前テナントの退去理由を確認しましょう。

 

 

~居抜き物件の契約に関する注意点~

原状回復の範囲を明確に

退去前の原状回復工事で、どの状態まで戻せばよいのかを契約前に、しっかり確認しておきましょう。

とくに居抜き物件の場合は現状回復の範囲が問題でトラブルになることが多いのです。

現状回復工事の範囲を明確にしていないとどんなことが起きてしまうのか、ひとつ事例を元にお話したいと思います。

 

 

~私の知人のカフェで実際に起きた、こんなトラブル~

退去の引渡し当日のことです。

2日間かけての片付け・クリーニングを終えて、いざ引渡しの約束の時間がやってきました。

引き下げる物は引き下げたし、クリーニングも完璧だし、突っ込まれるところなんて何一つない

そう思っておりました。

 

物件のオーナーさん登場

店舗に入った瞬間大きな声で

『冷蔵庫が残っているじゃないの』

いきなりの発言にびっくりしました。

冷蔵庫は前テナントが残していったもので、私の知人が購入したわけではない。

もちろん、こちら側が撤去する義務などないのですが、賃貸契約書の原状回復義務の箇所には

設備造作物は乙の費用で撤去・・・と記載がありました。

が・・・

居抜き物件を借りたのですから、借りた状態に戻せば良いという解釈でしたが、事前にオーナーさんと

確認を取り合わなかったことも反省し、結局冷蔵庫はこちら側で処分。

実際のところ、協議し合えば無駄な撤去費用をかけずに済んだのかも知れませんが、

お店を閉店させる苦労の中、戦う余力なんてなかったのかも知れません。

 

 

このように、前テナントの造作物や設備を撤去してくれと言われるケースもまれにあります。

 

無駄な撤去費用をかけない為にも、契約書の中身を確認し、責任の範囲がどこまであるのか明確にしておく必要があります。

 

 

設備の所有者を明確に

設備を引き継ぐときに、その設備がリースなのか、オーナー所有のものなのか、前テナントが購入し残していったものなのか、明確にする必要があります。

所有者がはっきりしていない、またはその設備に関する責任の所在を明確にしておかないと、後に設備の故障や撤去したい時に揉める原因になります。

また、前テナントが残していった設備の一部がリースだった!なんて話も聞いたことがあります。

その場合、リース会社が設備を引き取りにくるか、借り手側がリースの残債を引き継ぐことになります。

もしも、リースの設備が含まれていたなら、物件の引渡しまでに、リース代金の残債を清算されているかの確認を必ずとりましょう。

 

 

電気・ガス・水道は機能しているか

内装工事の中で費用がかかる部分といえば、電気・ガス・水道などの配管工事です。

万が一、配管設備に不備があった場合、もちろん工事が必要になります。

床や壁が仕上がった状態からの配管工事は、予想以上に費用も時間もかかります。

【仕上がっている壁や床を解体し、配管を通し、また現状に戻す】

この解体作業の分だけスケルトンでの配管工事よりも割高になるのです。

 

冷蔵庫やシンクも要注意です!!

冷蔵庫やシンクの入れ替えの際、搬入経路が狭く一部の壁を解体したという話も珍しくはありません。

 

契約前に設備がちゃんと機能しているかどうかを確認しましょう。

 

 

~最後に~

居抜き物件は、【初期費用を抑えられる】【オープンまでの日数がかからない】などメリットは沢山あります。

その反面、責任の範囲だったり、設備の所有者は本人でない分トラブルも多くあります。

居抜き物件でお店を開業するのであれば、契約書の内容をひとつひとつオーナーに確認するくらい慎重に契約することを提案いたします。

 

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中込 絵麻

中込 絵麻

調理師
1975年生まれ 東京都世田谷区出身 子供の頃から、飲食店の経営者であった父に憧れ、高校卒業と同時に調理師免許を取得するが、もうひとつの捨てられなかった夢「建築士」を目指し建築学科へと進学。 卒業後は内装設計会社へ就職し、設計~施工管理を担当する。 飲食店、病院、エステティックサロン、オフィス、住宅等を手掛ける。 手掛けた店舗の中には十数年経つ現在も売上をのばし続け繁盛店もあれば、オープンして数年後店舗の前を通ったら違う店舗になっていたという悲しい経験もあります。 夢を形にする幸せをお客様と共感したい。その幸せの形を継続させたい。 そんな強い思いの中、数々の経営者をサポートしてきた会計のプロである当事務所の代表税理士である中野克美と出会いなにか飲食店の皆様のお手伝いが出来ないだろうかと、このプロジェクトを立ち上げました。
中込 絵麻

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